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胸元で日誌を抱きしめ、神様に一言。
『明日はいつもと一緒で大丈夫ですッ!』
どうやら図書室に滞在しないみたいなので、ある意味、運がよかったのかもしれない。というか、本を借りて帰るのを初めて見た。今日は用事でもあるのだろうか?
「あっ、佐伯さん!」
しあわせ気分のまま靴箱まで来たところで、足を止める。小走りで近づいてきたのは、なぜかジャージ姿の現国の先生だった。
「神埼君と会ってない? 図書室にいると思ったんだけど、見当たらないのよね」
さすが神埼くん。先生にも“放課後は図書室”のイメージが根付いてる。
「ああ、たぶん今日はもう帰ったんじゃないかな。ついさっき見かけたから、急用なら走れば追いつくと思うよ?」
ふっと睫毛を伏せた先生は、何やら考え込むように口元を歪ませた。
「……ゴメン! 代わりに追いかけてくれない? 私、部活の代理頼まれてるの。ノート間違ってたから、明日提出し直してって伝えてくれる?」
青色のノートを差し出しながら、先生が首を傾げる。
フレンドリーな先生からの、神埼くんに関するお願いごとだ。断るわけない。
快諾して受け取ったノートは、左下に小さく【図書ノート】と書かれていた。きっと読んだ本のリストや、感想などが書かれているのだろう。
ちょっと……いや、かなり気になる。
気になるけど、邪な感情を振り払うように、私はいつものバス停へと走り出した。
――ノートを返した時、『中身を見たか?』と確認されるかもしれない。
――見たことがバレたら、彼は図書室に来なくなるかもしれない。
一度踏み込もうとして拒絶されている。これ以上、彼との距離を広げたくない。
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