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ある秋の金曜日、高校からの帰り道、私は高杉先輩に後ろから声をかけた。
「高杉先輩」
「宮内さん、今帰りですか」
「はい。実は私、先輩に告白したいことがあるんです。聞いてくださ」
「いやです。告白はしないでください」
高杉先輩は、私と同じ部活の、背の高い男子だった。
夕暮れの気配が濃くなってきた空の下、一度止めた足を再び動かして、長い人影が私から遠ざかっていく。
私は先輩の前に回り込んだ。
「待ってください。違うんです」
「なにが違うのですか」
「高杉先輩の考えているような告白ではないんです」
「いや、宮内さんは僕が考えているような告白をするつもりです」
「なんでそんなことが分かるんですか。いいですか、聞いてください」
高杉先輩は、仕方ないとばかりに肩をすくめた。
「では、告白します」
「はい。どうぞ」
「誰も知らないし報道もされてませんけど、実は明日、巨大な隕石が降ってきて地球が滅びるんです。人間も絶滅します」
「知ってます」
「実は私、予知能力があって、一日後に起きることが分かるんです。的中率は百パーセントです。絶対に当たります」
「そうなんですか」
「お疑いですよね。でも、本当です。私は予知を外したことは一度もありません。どんなにばかげた内容でも、必ず当たります」
「凄いですね」
「それはそれとして、もう一つ告白があるんです」
「ちっ」
「高杉先輩、この一年の間に、ボランティアや人助けを数限りなく続けてこられましたよね。自分がどんなに傷ついても、人のために駆動し続けてこられました。とてもご立派です」
「それはどうも」
「そんな高杉先輩を見ていて、私は、あなたを好きになってしまいました。ですから、好きです」
「ごめんなさい」
高杉先輩が、腰から体を折って頭を下げた。
「……振られるかどうかは私には予知できなかったので、ワンチャンあるかと思ったんですけど、だめでしたね」
「そんな、膝からくずおれるほどのことじゃないでしょう。膝にアスファルトのおうとつが刺さって痛いでしょうに」
「私はなんだかもう、痛いとか暑いとか寒いとか感じません。ただ絶望です」
「では、僕は帰ります」
「待ってください」
「なぜ」
「私がもう一つ告白があるって言ったら、舌打ちしましたよね」
「聞こえていましたか」
「いまいましいですけど、それはもういいです。もう一つ。隕石が落ちることを知っていると言いましたよね」
「それこそ聞こえていましたか」
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