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「なんで、先輩の名前が」 「僕も飛び級試験合格したからね」 「あんなにカレーパンばっかり食べてたのに」 「知ってる? カレーって食べると頭良くなるんだ」  宇和先輩は飄々と言うが、私はまだ信じられなかった。  もしやこれは先輩の悪戯なのではないか、と掲示板のプリントをもう一度よく見る。  文字だけの簡単なプリントは誰でも作れてしまいそうだ。しかし右下には赤い校印が押されている。  見たところそれは印刷ではなさそうで、仮に印刷だったとしても公印の複製は犯罪だ。 「本当に合格したんですか……?」 「うん」  先輩は簡単に頷いた。がっくりと身体中の力が抜ける。  そもそも先輩が今日学校にいた時点で疑問を持つべきだった。  今は春休み。しかも先輩はまだ一年生で受験も遠い。何か目的でもなければ学校なんて来ないだろうに。  しかしそうなると宇和先輩は来年高等部三年生になる。私は二年生。つまり私は先輩の先輩になれない。  ショック、よりも先に疑問が生まれる。 「先輩はなんで飛び級試験を受けたんですか?」  先輩はさっき簡単に頷いてたけど、この試験はそんなに簡単なものじゃない。私にはわかる。この人はきっと裏で生半可じゃない努力を積んでいるはずだ。  なにが先輩をそこまでさせたんだろう。 「あーそれ訊く?」 「え、訊いちゃダメなんですか」 「うーん、まあ、なんていうか」  なんだか言いづらそうに宇和先輩は口ごもる。  困り顔のような照れ笑いのような曖昧な表情を浮かべながら「まあどうせいつか伝えるしな」と小さく零した。  それから覚悟を決めたように、先輩は私の目を真っすぐに見つめる。 「だって日下さん、年上好きなんだよね?」 「……へ?」
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