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「あーあ、先輩ってほんとターメリック」 「ピンとこないけど悪口だよなそれ?」 「こなくていいですよ」  言い終えると、次の一歩が軽くなった。  ふわりと固いアスファルトに足を置いて、また一歩踏み出す。  さっきまでの足取りが嘘のように私は前へ進んでいく。 「……じゃあ、逆に」  風が止み、音は無く、時間が止まったかのようだった。  それでも確かに時間は進んでいて、だからこそ私は絶望して、そして今ここに立っている。  目の前の掲示板には『飛び級試験合格者』と書かれた簡素なプリントが貼られていた。  私はゆっくりと彼を振り返る。 「必死の努力が報われたら……どうしましょう」 ――〈中等部〉三年二組・日下明音(くさかあかね)  その紙面には私のフルネームがしっかりと書かれていた。 「そんなのカレーパンパーティーに決まってら」  振り向いた先にずっといてくれた彼は。  私の思った通り、満面の笑みを浮かべていた。
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