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「◯◯連続殺人事件?」
刑事たちが怪訝そうな顔で言った。
「どっかで聞いたことあるな……」
「それって、一昔前に流行ったゲームだろ?」
「ああ。確か、迷路みたいな場所があって、なかなか抜け出せなくてクリアが難しかったあれだ」
「なんで、今回の事件とゲームが関係あるんだ?」
三人の刑事が、一様に広太郎の顔を覗き込んだ。
「はっ? 事件とは関係ないよ」
広太郎はあっけらかんとして言った。
「なんだって?」
「刑事さんたちが、スマホの履歴の話したから言っただけで、詐欺事件とは無関係」
「じゃあ、何で隠そうとしたんだ」
刑事の一人がそう言うと、広太郎はバツが悪そうな顔で答えた。
「だって。あれ、違法の移植ゲームなんですよ。あの“ヤス”って名前は、リアルタイムでプレイヤーに連絡が来るっていうサービスで」
「違法のゲームだって?」
「そう。仲間うちで流行ってるんすよ。でも、このゲームのことで署っぴかれても困るから……。それに、真犯人の名前なんて言ったら、ゲームの醍醐味無くなるでしょ?」
取調室に異様な沈黙が流れた。だが、一人の刑事が咳払いをして、言葉を発した。
「ま、まあいい。詐欺事件の方を聞かせてもらおう」
明らかに動揺している刑事たちを不思議そうに見ながら、広太郎はポツポツと話始める。
「だから、俺はただの受け子だし。上の方までは分からないんだよ。受け子仲間は、何人かいたけど……って、刑事さん?」
どこか上の空で聞いている刑事たちを見て、広太郎は声をかけた。
「……そうか。あの犯人、本当にヤスだったのか」
「えっ?」
「俺、あのゲーム途中で挫折したんだよな……」
「俺も……」
「あの、刑事さーん?」
取調室の中で気落ちする三人の刑事。広太郎は、現役刑事たちの意外な告白を戸惑いながら聞いていたのだった。
─────おしまい
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