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クリスマスっていつの間に恋人たちがイチャイチャする日になったのだろう。クリスマスって知らない人も多いと思うけど、イエスキリストの生誕祭だからな。そんな日に恋人たちがイチャイチャイチャイチャ、むしろ汚らわしいのではないだろうか。
私はそう思うと、はぁと溜息を吐いた。そんなことを考えてしまう自分が嫌だ。クリスマスにイチャイチャする相手がいないからって、僻みばっかり考えてバカみたいだ。今は仕事に集中しないと。
時計は夜9時を指していた。外では恋人たちの幸せそうな顔でいっぱいなのだろう。笑い声だって、窓はぴったり閉まっているのに聞こえているようだった。
残業で会社に残っていた私はパチパチとパソコンに文字を打ちながら、早く仕事を終わらせようと励む。何せ、夜がどんどん進んでいくと駅前は恋人たちで賑わっていくのだ。駅から近いこの会社は、クリスマスには最悪な立地に変わってしまう。だから一分一秒でも早く仕事を終わらせて家に帰りたかった。なのにそう思えば思うほど、仕事は終わらない。何故だ、矛盾している。
「白川、顔怖ーい。二人で残業クリスマス楽しもうぜ」
「喧嘩売ってんのか、このチャラ男が」
「チャラ男って酷いなぁ。俺の名前は佐倉和泉なんですけど」
佐倉、という男は私の同期だ。昔からの良きライバルで、私が所属している営業部でも一二を争う関係だった。女が優秀というだけで周りから煙たがられるが、佐倉はそういうことをしない人間であるため、一緒にいるのが楽で何だかんだ仲が良かった。
「有香ちゃん、クリスマスに恨みでもあるのかな? 和泉君が聞いてあげよう」
「気安く下の名前で呼ぶな。後、クリスマスの話も一生するな。仕事に集中しろ」
「……へーい」
佐倉は自分のデスクに回転椅子に座りながら戻ると、キーボードを叩き始めた。
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