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私はそう言うと、パソコンの電源を落として身支度を始める。本当に、興味はない。佐倉の好きな人の話なんて、聞きたくない。興味なんて、毛ほどもない。本当に。
「興味持ってよ、俺のこと」
私は手を止めて、「は?」と佐倉に言うと佐倉が子犬のようにじっと私のことを見ていた。私は溜息を吐くと、「アホらしい」と言ってまた手を動かし始める。
「ねー、好きな子に振り向いてもらうにはどうすれば良いと思う?」
「自分で考えてよ」
「白川なら何されたら相手のこと意識する?」
私は身支度を整え終わると、背もたれに体重を預けた。考えたくないし、答えたくなかった。でもそんな感情なんて気づかないフリして、私だったら何されたら意識されるかを考える。
「普通に抱きしめられたり、手握られたりしたら意識はするけど。でもまぁ、相手にもよるね。セクハラになるし」
「俺がしたら意識する?」
「しないよ、佐倉はそういう対象じゃないし」
精一杯強がり、私は荷物を持って立ち上がると、「ほら行くよ、焼肉」と言って部屋の外に出ようとする。すると突然腕を掴まれて私は振り返ると、椅子から立ち上がった佐倉の体温が私を包み込んだ。私は突然のことで何が何だか分からず、硬直してしまう。
「何でそんな悲しいこと言うの?」
耳元で言われる言葉に、私はやっと何をされているのかに気づき、「何してんの」と言って離そうとする。でも佐倉はビクとも動かなくて、ただ私のことをぎゅっと抱きしめていた。
「俺が好きなのは白川だよ。気づけよ」
「ねぇ、離して」
「俺が白川の心に入る隙はねぇの?」
佐倉はそっと離れると、真正面から私のことを見た。いつもと違う男の顔に、私はパッと目を反らしてしまう。
「意識、しないんじゃなかったの?」
「してないし……」
「じゃあこっち見て言えよ」
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