幽冥への通り道

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 店主は豪快に笑うと、また腸詰めを焼き始めました。相変わらず人通りが無いのにも関わらず、店主は手を休めることなく腸詰めを焼いています。匂いにそそられてやって来る人なんていないだろうに。 「貴方はどうしてここでお店を? ここよりあちらの方が賑やかでしょう」 「何を言う。あっちより、こっちの方が賑やかじゃないか」 「おっしゃっている意味が分かりませんわ」  ここには私と店主以外誰もいません。断然あちらの方が賑やかです。それなのにこの店主はここの方が賑やかだと言います。私は不思議に思いました。 「御嬢さんこそ、そう思うならどうしてここへ?」 「ただの気分ですわ」 「そうかい、そうかい。でもこれ以上先には行かない方が身のためだぜ」 「どういう意味ですの?」  店主が視線を動かすと、私も釣られて視線の先を見ました。そこには錆びれた鳥居が、不気味な雰囲気を出しながら佇んでいました。 「あそこを跨げばあの世だ」  店主はそう言って、今度は焼いた腸詰めを串に刺し始めました。私が少しして鼻で笑うと、店主が私を一瞥します。 「御冗談を」 「いいや、冗談じゃないぜ。俺はそう言って何人もあの世へ逝ったやつを見た」 「またまた」 「嘘だと思うなら、跨いでみなさい。ただし俺は忠告したからな」  私は腸詰めの最後の一口を食べると、高ぶった気に任せながらフラフラと鳥居に近づきました。鳥居は近づけば近づくほど、その不気味さを増します。誰も管理していないのか、草は伸びきり、石も幾つも転がっていました。
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