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好きな人
彼は小説を書く。
そして、こっそり原稿に書いて
「これでいいかな?」と見せてくれる。
でも……その物語は私ではなかった。
別の彼女だった……。
今ここに私は何のためにいるのだろう。
結局彼の心には初恋の彼女が離れずにいるみたいだった。悲しくて、だんだん涙がじんわりと目に浮かんできた。そして、ティッシュで鼻をかんでるフリをして涙を拭く私。
「なんで泣くのよ。」
そう言い聞かせて自分と戦っている。
でも、この寂しさは何なのだろう。
苦しくて気持ちを押し殺して、まるで自分を消してしまいそうだった。このまま彼の前から消えていなくなればいいのに……。
「そんなに忘れられない人がいるのなら、私はあなたには必要ないよね。さよなら。」
って、こんな別れをするのは20代までで……。
30代になれば、
「彼氏なんかいらないわよ。子供は欲しいけど……」
そんな素っ気ない態度をとる。
あっという間の40代になると急にモテ期が来る。
「なんで今頃こんなにモテるわけ?」
出逢いがもっと早ければと後悔が残る。
そして50代にもなればさりげない会話をしてくれる人にキュンときてしまう。
こんな歳でもお茶に誘ってくれる人はいるもので……。
60代超えればほぼ後期高齢者扱い。
若い人に助けられる日々。
今頃若いっていいなと思い返し、私もようやく学生時代の甘酸っぱい初恋の人を思い出す。
「あっ‼」
私は慌てて隣の旦那様に心の中で謝った……。
そして、小さく告白をした。
「あれ?私……本当は一体誰が好きなんだろう……」
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