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「いらっしゃいませ」
中から可愛らしい声が聞こえてきた。
思いがけない声に少し驚いてしまった。
出てきたのは色白の15、6歳くらいの少女
淡い茶色で背中まで伸びた髪。
くるくるとした大きな茶色の瞳がこちらを見つめている。
黙っていると
「今日は時計の修理ですか?」
と聞いてきた。
時計…
改めて周りを見ると古い腕時計が陳列されていた。アンティーク感のある棚や椅子、小さなテーブルに店の雰囲気を壊さないような植物が飾られている。
少女は燻んだブルーのワンピースに淡い色の髪を束ねていた。
ここは時計店なのか?
黙っていると少女が話しかけてかきた。
「古い時計や壊れた時計を修理して販売もしてます。何かお探しでしょうか?」
何か言わなければと思い、とっさに自分の時計にふと目をやった。
3年前、結婚する直前のクリスマスプレゼントに妻の律子から貰った時計。
「古い時計だけど高級だから大切に使ってね」と言っていた。
メンテナンスもしてないのにしっかり動いている。
時計を見ながら、ふと小さく笑った。
幸せだったあの頃を思い出した。
腕から時計を外して
「これを見てもらえないか?」と聞いた。
俺は腕から外した時計を少女に渡した。
少女は時計を受け取ると、蓋を外しに取り掛かった。
何年も開けてないからかなりきつかったらしく
、開けるのに10分くらいかかった。
「なかなか開かない。サブマリーナは裏蓋開けるの結構大変なんです。」
と言って笑った顔は幼くあどけなかった。
蓋が開くと中の機械を真剣に見ていた。
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