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「もしよければ名前を教えていただけますか?」
少女はくるくるとした瞳で聞いてきた。
名前…あぁ名前か。
「斎藤」
「斎藤さん、これはとても良い時計ですよ。
見てください。中の機械がとても綺麗です。
大切に使われてたんですね。」
見ると機械はキラキラと輝いていた。
時計なんて興味がなかったから仕事上、動いてれば何でもよかった。
「50、60年くらい前の時計ですよね?
とても大事にされてたんですね。
この時計はオーバーホールすれば100年でも200年でも使い続けることができます」
「200年…
そこまで生きてられないけどね」
俺は笑いがら言った。
強張っていた心が少し緩んできていた。
「こちらに座ってお茶でも如何ですか?」
そういえば昼食べたきり何も口に入れていなかった。勧められるまま椅子に座った。
「すぐお茶淹れますね」
少女はそう言いながら店の奥に消えた。
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