第一章 回転ベゼル

6/9
前へ
/10ページ
次へ
待っているうちにソファで眠ってしまったようだ。 目を覚ますと律子が無表情な目でこちらを見ていた。 酒の匂いが鼻についた。 かなり酔っているようで何かぶつぶつと言っている。 「あんたさえいなければ…」 手に挟みを持ってこちらに向かってきた。 咄嗟に避けようとして揉み合い律子と一緒に倒れ込んでしまった。 「大丈夫か…」 倒れた律子は動かずピクリともしない。 電気をつけたら律子から血が流れていた。 血の滲みはどんどん広がっていく。 俺が刺したのか? 体が震えて頭が真っ白になった。 何も考えられずその場から逃げてしまった。 車に乗りあてもなく彷徨った。 夢じゃないのかと何度も思った。 人を殺した…人を殺した そんな言葉が頭の中をグルグルと回っていた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加