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ウラ
なんて気分がよいのだろう。自分の思い通りにことが進んでいる。
こんなに素敵な彼と、運命の出会いを果たすことが出来たのだ。彼は優しい。私のわがままを受け入れてくれたり、私のダメなところも認めてくれる。沢山記念日を作ろう、沢山彼と連絡を取り合おう。彼のことを愛したい。誰にも負けないように。
小さい頃は私が舞台の主人公になりたかった。本当のことを言えば今だってそうだ。でもそれは無理だと諦めた。だから彼の人生を照らす、スポットライトになりたいと思った。
いつからか分からないが、愛する彼はだんだんと私に冷たくなった。初めは勘違いだと思っていた。でもそれが勘違いでなく、彼の「別れよう。」の言葉に変わった時、私は自分の命を絶っていた。
でもだからこそ、こうしてずっと彼の傍にいられる。こうして生身の体がなくなり、世の中ではもしかして怨霊みたいに気味がられても、私はずっと彼の傍に居られるのだ。そう、私は死んでから霊体として、ずっと彼の傍に居られるようになったのだ。
そういえば彼には最近年下の彼女ができた。何を血迷ったのか、なんであんな女がいいのか私には分からない。でもずっと彼と一緒に居られるのは、私だ。今は幸せな思いをさせてあげる。
私が彼の人生のスポットライトとなるのだ。彼が最高に幸せだと感じた瞬間、スポットライトの私は急に全ての電気を消して、彼の人生の幕を終演にもって行くのだ。彼は何があっても、あの女とは結ばれない。
私は主役にはなれなかった。でも彼の人生を狂わせるスポットライトになれる。こんなに楽しいことはないだろう。
私はそっと彼の肩に触れた、嗚呼なんて愛おしいのだろう。彼の俯いた時の長いまつ毛、少し赤らんだ唇。そして私は、彼の頬に接吻した。
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