その男、偽造文書の天才につき

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「よっと……」 男がそう気合いを入れて、立ち上がった。 「すいませんね。調べものをしたくて、資料を探してたら、地層の下の方にあって……。引っ張り出したら崩れちゃって……」 「はぁ、地層……」 言い得て妙だ。そう思いながら、男を見て── (デカっ!!) 男の身長は、ゆうに180は越えてるだろう。一緒に居る寺鷹や自分だって、背は低い方ではない。 (──て言うか、男の格好……) 黒い着物を羽織り、着流している。それだけでも奇異に見えるが、男の左目── (黒の眼帯って、厨二かよ!!) 前に、若い女性の作家から『このゲームにハマってるんですよ』と、言われて見せられた── (刀剣乱舞……? あれに出てくる、燭台切なんとか。みっちゃんとか言ってたか) 近いものがあるとすれば、あんな感じか。 (いや、あれの下位互換? あっちは、キリッとしてたし、色気もあったけど、こっちはもっさりというか、ぼんやりというか) 「いやぁ、本当に助かりましたよ。ありがとうございます」 「ん? あ、いやいや全然お構いなく」 失礼なことを考えていたのを気取られないように、遼が咳払いしながら答える。
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