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「いっそ……遺言書を偽造できたらいいのにって」
「偽造……って」
「そうすれば、向井先生の願いを叶えてあげられるから……」
そこまで言って、遼がハッとなる。
「や、今のは冗談ですから」
笑いながらごまかす遼を千冬が黙って見ている。
「いやいや、本当にすいません。だいたいそんなことできるはずないんですから。仮にやったとしても、筆跡鑑定に出されてアウトですよ」
『なにせ、100%、本人と同じ筆跡を再現するのは不可能だから』
筆跡は、本人のクセが如実に現れる。筆圧、とめ、はね、払い、句読点の位置。文字の配置。
どんなにごまかして書いたとしても、それはごまかせるものではない。
「あはは。忘れてください。本当につまんないこと言っちゃって……」
「できるよ」
「いやぁ、できるって……千冬先生も意地悪だなぁ。俺の冗談を冗談で返して……」
「できるやつを一人知ってるの」
真顔で答える千冬に、遼も笑顔を消す。
「あなたの要望に答えられそうな人を知っている」
千冬の真剣な言葉に、遼はゆっくりと問う。
『それは、誰ですか』──と。
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