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ギシギシと鳴く廊下を進む寺鷹の後ろを遼がついていく。
寺鷹が右に曲がり、その後をついていた遼が思わずギョッとする。
廊下の両端に、乱雑に積み上げられた書物、封筒、訳のわからない書類に、紙──。
それが自分の背丈を越す程に積み上げられ、人が一人やっと通れる程の道を寺鷹が器用に進んでいた。
「あ、気をつけてくださいね。これね、絶妙なバランスで積み上がってるみたいで……。ちょっとでも触ると、崩れてきたりするんですよ。この間、両側から崩れてきた時は、死ぬんじゃないかと思いましたね……」
「……洒落になりませんよ」
いや、本当に洒落にならないと、遼は呟く。
てか、家主はよく生きていられるよなと。
(……これは想像以上に厄介な人物かもしれない)
『あなたの要望に答えられそうな人物を一人だけ知っている』
そう、言われてここに来たはいいけども、軽く後悔している自分も居る──。
慎重に、自分の身体やカバンが積み上げられた堆積物に触れないように、廊下にできた細い道を遼は歩く。
やっとの思いで、たどり着いた部屋の扉を寺鷹がノックした。
「ユウさん。ユウジさん、居ますか? 居たら返事をしてください」
部屋からは返事はなく、静寂が支配している。
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