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「あの……今日のところは出直し……」
「出直して」──そう言い終わらないうちに、寺鷹が部屋の扉ををまたもや、勢いよく開けた。
廊下と同じくらい、いやそれ以上に堆積物のある部屋。しかも、一部崩れている。
部屋の中は静まり返り──
(いや……何か音が聞こえる? ガサガサ……って)
これだけの堆積物である。まず間違いなく、黒光りするあれの音だろう。
恐る恐る、微かに聞こえてくる方に視線を向けたのと同時──
「……返答がないと思えば。あなた、何をして遊んでるんですか?」
寺鷹が呆れたように呟く。
寺鷹の視線は、崩れた堆積物の方を向いている。
さっきからしているカサカサ音も、そこから聞こえていた。
「……あ、遊んでなどいません。て言うか、助けて……」
「うわっ!!」
堆積物の中から、呻くような声が聞こえ、遼が飛び上がった。
「え、え!? ちょ、埋まってる!? だだだだ大丈夫ですか!?」
あわてて、堆積物をバラバラと押し退け、堆積物からはみ出ている脚をグイッと引っ張ると。
「はぁ……。助かりました」
そう言って、堆積物から抜け出た男がニッコリと笑った。
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