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「助かりました──じゃないです。だから、普段から片付けなさいと、いらないものは捨てなさいと……」
ため息を吐きながら、ぶつぶつと文句を言う寺鷹に対して、男がムスッとしながら答えた。
「捨てたくても、捨てられないんですよ。資料として必要なんで。て言うかですね、私もあなたに言ったはずです。ドアを開ける時は、静かにお願いしますって。地層が崩れたの、半分はあなたのせいですよ、寺鷹さん」
「呼び鈴を鳴らしたのに、対応しないあなたが悪いんです」
「こんな辺鄙なところに来るのは、あなたか姉さんか、宅急便ぐらいです。宅急便なら不在票を入れてくれるし、姉さんは呼び鈴押さずに勝手に入ってくる。あなたも勝手に入って来ましたけどね」
「だいたい……」──と、言いながら、男が崩れた地層を直し始めた。
「あなたが来るってことは、仕事の依頼でしょ? あなたの依頼は特にめんどくさいし、ぶっちゃけ、私は仕事は極力したくないんですよ。いや、極力じゃなく、絶対にしたくない」
「威張って言うことじゃありません。依頼主の前で、何を言ってるんですか、あなたは……」
「依頼主?」
男の手が止まり、くるっと遼の方を向く。
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