その男、偽造文書の天才につき

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「あ、すいません、紹介が遅れました。俺……いや、私、こういう者です」 急に話を振られ、慌てた遼が名刺を男に渡す。 「……新田遼。編集さん? しかも、大手の」 「いやいや!! 大手と言っても、まだまだ若輩者で……」 「……大手の出版社が何の用です。自叙伝でも書けって言うんですか?」 「あ、いや……そういうのじゃなくて……」 あからさまに嫌そうな態度を取る男に、気圧されながらも遼が説明しようとした時── 「やめなさい。依頼と言ったでしょう。威嚇してどうするんですか」 横から寺鷹が嗜めた。 「依頼でも同じだ。あなたの持ってくる案件だ。どうせまた、ろくでもない何かの偽造でしょ? 今度はなんです。遺言書の書き換えですか? 委任状の偽造ですか?」 「帰ってください」──と、男が背を向ける。 「言ったはずです。私は仕事はしたくない、と」 背を向けて、堆積物を片付ける男に、遼が声をかける。 「あのっ!! いきなり訪ねた無礼は謝ります。ですが……話だけでも聞いて貰えませんか?」 男からの返事はない。 「俺は、ある人から大変世話になってて。世話になったその人は亡くなられたんですが……。その人の娘さんを助けたいんです。そのためにあなたの力を借りたいんです。あなたの──」 『筆跡模写の力を──』
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