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心の声がダダ漏れてしまい、焦っていると、園子さんがこちらを見て優しく微笑んだ。
「やっぱり店長さんのオムライスが一番だって確かめたくって。でも、比べなくたってわかるから必要ないですね。うーん、じゃあ、アラビアータにしようかな」
「え、園子さんそれ辛いですよ」
「知ってます。夏は辛いものが食べたくなるんです」
そうか、夏は辛いものか。店でも夏期限定メニューで何か出してみようか。
「店長、デート中に仕事のこと考えるのはダメです」
「いや、鏑木がいるから今日はデートじゃないだろ」
「じゃああたしがいなくても今日ちゃんとしたデートができたって言うんですか?」
もう何も言い返せない。今日はおとなしく鏑木先生に楽しいデートプランとやらを伝授してもらうことにしよう。
「店長さんは何食べるか決まりましたか?」
「俺はミートソースドリアにします」
「じゃあ店員さん呼びましょうか」
そう言って、園子さんは白くて細い指を呼び出しボタンに触れさせる。俺はつい、その園子さんの指に俺の指を重ねていた。
「ふふ、一緒に押しますか?」
初めての共同作業です、というふざけたナレーションが頭の中に流れたそのとき。
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