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 席に戻ると店長さんはゆっくりと立ち上がり、「俺も取ってくる」と言ってドリンクバーに向かった。優香ちゃんはその隙にさっきまで店長さんが座っていた位置にわたしを押し込んだ。 「隣のほうがくっつけますよ」  優香ちゃんはパチンとウインクをした。あたふたしている間に店長さんはウーロン茶を片手に戻ってきた。優香ちゃんとわたしを交互に見てから、わたしの隣にそっと腰を下ろす。急に縮まった距離に、どくんどくんと心臓が騒いでいる。 「席替え? 園子さん、狭かったら言ってくださいね」  店長さんはわたしの顔を覗き込むようにして、優しい顔で言った。今はたぶん真っ赤だから、あまり見ないでほしいのだけど。 「あの、店長さん。……近いです」 「ああ! ごめん、そうだよね」  店長さんは頭を抱えながらソファの端に縮こまってしまった。違う、離れてほしいわけではないのに。
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