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「店長、食事中ですよ」
鏑木の冷たい声に我に返る。園子さんの耳に伸ばしかけた手を固く握って引っ込めた。園子さんは俺のそんな様子に気づかず、黙々とパスタを巻いている。ウーロン茶を流し込んで、妙な気持ちをクールダウンさせる。そのままあっという間にドリアを平らげた。ふたりはまだ食べていて、手持ち無沙汰になった俺はメニューを再び広げた。
「店長、まだ食べるんですか?」
「んー、どうしようかな」
何か、さっぱりしたものが食べたい気分だった。一番最後のページ、真ん中あたりで目を止める。
「これ、今日の園子さんみたいですね。これにする。レモンのシャーベット」
「あ、おいしそう。わたしもそれ食べたいです」
「じゃあ頼んじゃいましょ」
鏑木はまたもやすばやく呼び出しボタンを押した。
――ピンポーン
園子さんは紙ナプキンで口を拭って、それから、思い出したように俺が掛けたタオルを外した。顔の前で広げて、ソースが付いていないか確認している。
「あの、大輔さん。タオルありがとうございました。洗ってお返ししますね」
タオルで顔の下半分を隠すようにして、こちらを見上げるような園子さん。なんであなたはそんなに愛らしいんだ。吸い寄せられるように彼女の頭を撫でた。
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