ワンルームは狭くて甘い

1/6
前へ
/6ページ
次へ

ワンルームは狭くて甘い

今夜も(しゅう)さんは、バイト終わりに俺の部屋にやってきた。「最近よく来ますよね?」と聞いたら、「だって、なんか落ち着くし」とのコメント。落ち着くって、何に対してだろう。この部屋が、だろうか。それとも、俺といることが、だろうか。柊さんは、いつも言葉が足りない。 「やっぱ冬休みシーズンは店混むわー。特別手当が欲しいくらい」 そう言って柊さんは、すっかり指定席となったビーズクッションを両手で掴むと、ベッドの傍まで引きずっていった。何で配置換えするんだろうと思っていたら、柊さんはビーズクッションに仰向けに寝転がり、両脚をベッドに載せた。 「柊さん。その体勢、ツラくないですか?」 「いやいや、(あさひ)君よ。立ち仕事で疲れた脚を、こうやって上げることでだね、リンパが流れてイイ感じになるのだよ」 気持ち良さそうに目を細める柊さんは、どことなく小動物っぽい。例えるなら、餌を頬張ってご満悦のハムスターか。年上の男の先輩から、そんなことを連想するのは失礼だけど。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加