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ワンルームは狭くて甘い
今夜も柊さんは、バイト終わりに俺の部屋にやってきた。「最近よく来ますよね?」と聞いたら、「だって、なんか落ち着くし」とのコメント。落ち着くって、何に対してだろう。この部屋が、だろうか。それとも、俺といることが、だろうか。柊さんは、いつも言葉が足りない。
「やっぱ冬休みシーズンは店混むわー。特別手当が欲しいくらい」
そう言って柊さんは、すっかり指定席となったビーズクッションを両手で掴むと、ベッドの傍まで引きずっていった。何で配置換えするんだろうと思っていたら、柊さんはビーズクッションに仰向けに寝転がり、両脚をベッドに載せた。
「柊さん。その体勢、ツラくないですか?」
「いやいや、旭君よ。立ち仕事で疲れた脚を、こうやって上げることでだね、リンパが流れてイイ感じになるのだよ」
気持ち良さそうに目を細める柊さんは、どことなく小動物っぽい。例えるなら、餌を頬張ってご満悦のハムスターか。年上の男の先輩から、そんなことを連想するのは失礼だけど。
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