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 天使という生き物は、自分が好意を持つ相手の姿形を取るのだろうか。そう考えたローラだったが、話せば話すほど天使は司祭であると確信できてしまった。 (どうしましょう。天使さま……いいえ、司祭さまって演技がへたくそ過ぎませんこと?)  ローラを慰めつつ、司祭しか知らないはずの裏事情を口にする天使は、彼女の死に動揺しているのか、自分の失態に気がついていない様子。  そしてローラは、少しでも長く天使もとい司祭と共にいるために、意味もなく婚約破棄を繰り返しているのだった。 「長く愛した相手に未練を持つなというのは難しい話だろう」 「どうでしょうね。恋は落ちるものですから、年月の長さは関係ないのではないでしょうか?」  相手をぼかした状態で、切ない恋心を延々と語ってきたものだから、ローラが本気で婚約者に恋をしていると司祭が思い込むのも無理はない。  だが、好きな相手に誤解されているのは気に入らない。もともと、婚約者に抱いていたのは多少の友情と国への義務感である。恋心は、特別な相手――司祭――にだけ感じたものなのだ。そう言い募るものの、なぜか天使はますます不機嫌そうになる。 「他者を恨む、羨むというのも、確かに人間にとって当たり前の感情ではある」 「私も親友みたいにふわふわと可愛らしい容姿だったら、異性の心をがっちりつかめたのかもしれませんね」 (まあ、司祭さまは天使さまということだけあって、そんじょそこらの人間では太刀打ちできないほど美しいですから。地味な私が多少華やかになったところで、気は引けないんでしょうけれど)  小さくため息をついたそのとき、ローラは気がついた。天使の髪色がうっすらと菫色に染まっていることに。 (司祭さまの御髪は、銀色だったはず……)  髪の一筋に手を伸ばしかけたそのとき、ローラは天使に抱きしめられた。
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