セフレに恋した憐れな俺

10/13
前へ
/55ページ
次へ
俺は、木下と羽鳥の会話を聞いてから全く仕事に集中できずにいた。 そこで、気分を変えようと給湯室へ向かった。 すると、俺と鉢合わせた木下が気まずそうにその場から立ち去ろうとした。 俺は思わず彼を呼び止めた。 「コーヒーでいいか?」 「あ、うん。」 俺たちの間に重い空気が流れる。 木下に聞きたいことは山ほどあるのに、本人を前にすると何も言えない。 「羽鳥先輩と仲良いんだな。」 って、俺は何を言っているんだ。 木下が誰と何をしようと、俺が口出し出来る立場ではないのに。 俺は木下のセフレなのだから。 自分で言ってて虚しくなる。 「それで、先輩とはやったのか?」 だから、なんで俺はそんなことを聞いてるんだ。 俺以外の男が木下に触れているなんて、考えたくもないのに。 誰か俺の口を塞いでくれ。 けれど、頭では分かっているのに、心が止められない。 「でも、キスはした。」 「はぁ?」 今なんて...? 木下のその言葉を聞いた瞬間、俺の中の何かが壊れる音がした。 もう何ふり構っている場合ではない。 俺は、木下が好きで、木下の全部が欲しい。 「隙見せてんじゃねぇよ。」 俺はその場で木下の首筋に思い切り吸い付いた。 羽鳥に、木下を盗られてたまるか。 俺はわざと見える位置に痕をつけた。 そして、覚悟を決めてこの一言を木下に告げた。 「今日、木下の家行くから。早く帰ってこい。」 もう限界だ。 俺は今夜、木下のセフレをやめる。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

76人が本棚に入れています
本棚に追加