好き宣言

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好き宣言

 結局、答えのないままあなたは帰って行った。  残された僕は、唇に残る感触に指で触れる。  思い出すだけで熱くなる身体――あなたには好きな人がいるはずで――それなのに、僕にキスをした。  これは一体、何を意味するのだろう?  頭の中は破裂寸前というくらいこんがらがっていて、僕はまた眠れぬ夜を過ごすことになった。  眠れなかった僕は、鏡の前に立って自分の顔を見れば、目の下にはっきりとくまが出来ている。 「まただ……」  人指し指で軽く押さえ、一度だけ溜め息をつくと、そのまま学校へ向かった。  学校では、徹夜でゲームでもしてたんだろうってからかわれて、適当に話を合わせて笑い話にしていたけれど、本当はまだ頭の中は昨日のことでいっぱいだった。  あなたの僕を見つめる目が忘れられなくて――  あなたの唇の感触が忘れられなくて――  思い出すだけでドキドキするんだ。  学校が終わり、真っ直ぐ家に帰ろうとあの曲がり角を曲がった瞬間――、僕の目に、信じられない人が飛び込んできた。  それは間違いなく、あなたの初恋の人――。  誰かを待っているかのように、体をユラユラ揺らしながら、リズムを刻んでいる。  僕は、思わず下を向き、そのまま玄関のドアに手を掛けた。 「あっ、あなたこの間の……」  僕の姿に気づいた女の人が、声を掛けてくる。 「えっと……」 「この前、そこの角でぶつかった……」 「ああ……あの時の……」  気づいていなかったフリをして、対応する。  その女の人は、にっこりと微笑みながら、僕を見ていた。 「もしかして、あなたが壮亮君?」 「そうですけど……どうして僕の名前……」 「ふーん……」  僕の名前を口にしたその人は、上から下までの隅々に目を凝らしてくる。 「あの……」  その視線が嫌で、気をそらそうと声を掛けた。 「そっか、あなたが……」 「僕が何か……?」 「ちょっと会いたくなったの。玲弥君の幼馴染みなんでしょ?」 「幼馴染み……まあ、そうですね」  幼馴染み――その言葉に、胸がちくりと痛んだ。 「壮亮君、覚えておいて。私は、玲弥君が好き。絶対に諦められないの」  僕に向かって真剣な表情で伝えてくる。  それだけで、この人の想いが本当なんだということが、痛いくらい胸に突き刺さった。 「どうして僕に……?」 「何でだろ……? けど、どうしても言っておきたくて」 「はい……」  どう答えていいのかわからなかった――。突然の出来事に戸惑いを隠せない。  そんな僕の姿を見て、その人はクスッと笑い、そのまま帰って行く。  僕は、ただその後ろ姿を見えなくなるまで眺めていた。    どうして、わざわざ僕に会いに来る必要があったのだろう?  どうして、玲弥さんのことが好きだと告げる必要があったのだろう?  また僕の頭の中はパニック状態で、眠れない夜が続く――。
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