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「僕が眠る頃に灯りが点くんです」
「ああ……そうだったんだ。眠りを妨げてたかもな」
「いえ、そうじゃなくてっ……」
「そんな困った顔すんなよ。ごめん、ごめん……」
玲弥さんの言葉に、どう反応していいのかわからず困った表情を見せた僕の頭を、玲弥さんは大きな手で優しくクシャクシャしてきた。
玲弥さんはただ、可愛い弟のような存在の僕にする普通のしぐさなのかもしれないけれど、僕にはそうじゃない。
恥ずかしくなって、思わず顔を上げることができなくなり、俯いてしまう――。
おかしいと思われているだろうか――? でも、僕はもうずっと前から目の前にいる玲弥さんに恋をしている。
いつからかはわからないけれど、気づいた時には好きになっていた。
だから、ちょっとしたことでもこうして反応してしまう――。
「そういえば、壮亮はどこの大学へ行くか決めてるの?」
「いえ、まだ全然……」
「だったら俺と一緒のとこ来ない?」
「えっ……?」
「せっかくだし、大会終わったら家庭教師してあげるからさ。どう?」
思いがけない言葉だった。まさか、同じ大学へ誘われるなんてこと思ってもいなかったから――。
「家庭教師ですか?」
「俺じゃ頼りない?」
「いえ……そうじゃなくて。バイトしてるんですよね?」
「うん、家庭教師のね。だけど、壮亮は特別に無料で見てあげる」
「そんなっ……」
「まっ、考えといて。おばさんたちにもちゃんと相談するように」
「はいっ、わかりました」
「じゃあ、気をつけて行ってらっしゃい」
そう言って、もう一度僕の頭をポンポンすると、玲弥さんはにっこり笑顔を見せてその場から離れて行った。
僕は触れられた場所に手を添えて、赤くなる顔を必死で隠す――。
ドキドキしているこの心臓がどうか静まりますように――。
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