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「ここが食堂。けっこうメニューも豊富で美味しいんだ」
「へえ、玲弥さんはよく利用するんですか?」
「毎日よね! クラスの仲良しグループで毎日一緒に食べてるの」
「ああ……そうなんだ」
「もしかして、純菜さんも……?」
「もちろん! 私もグループの一員だから。ねっ、玲弥君」
「ああ……」
僕たちの会話にズカズカと踏み込んでくる純菜さんに、僕は正直驚いていた。
だって、こんなことしなくても、別に二人の関係を邪魔するつもりなんてないし、僕はそのスタートラインにさえ立てていないのだから――……。
移動する間も、僕の少し前を二人が歩いていて、あなたの腕には常に純菜さんの手が絡まっていた。
時々、ちらっと向けられる視線が、僕の胸をチクッとさせる。
まるで見せつけられているみたいに、勝ち誇ったような表情で僕を見る。その顔を見せられる度に、視線を逸らしてしまう。
真っ直ぐに見れるわけがなかった――……。
「ここは俺たちが授業受けてる教室」
「うわー、こんな風になってるんですね」
中を覗くと、長い机が横に三列、縦に十五列あり、座席は石段の上に固定されていた。
高校とは全く違う雰囲気に、何だか少しワクワクする。
この教室で、あなたはどんな授業を受けているんだろう?
「そして、ここが学校でのイベントやちょっとした講義なんかが行われるメインホール」
「すごーい!! 広いんですね」
「この間、ここで玲弥君の表彰式が行われたのよ」
「表彰式……?」
純菜さんの言葉に、僕はきょとんとした表情であなたを見た。
「純菜……もういいだろ」
「だって、本当のことじゃない」
「別に自慢することでもないし……」
「そうかな……十分に自慢できることだと思うけど……」
二人のやり取りを傍観している僕に、あなたがチラッと視線を向けてくる。
僕に聞かれてマズイことでもあるんだろうか?
話そうとしている純菜さんを、頑なに止めようとしている気がする。
「玲弥君ね、英語の実力を認められて、最優秀賞に選ばれたの。しかも、ハーバード大学への留学権も手にしたのよ。すごいと思わない?」
「ハーバード……」
「おい、純菜! もう、いい加減にしろよ!」
あなたは大きな声で言うと、純菜さんの腕を掴んだ。こんなに大きな声を出している姿を見たのは初めてだった。
「何よ! 本当のことじゃない!!」
「別に、今言うことじゃないだろ……」
「どうして!? 壮亮君に知られたくないから!?」
「なっ……違っ」
純菜さんまでもが興奮気味に声を荒げていて、この場の空気が一変した。
僕は、どうしていいのかわからずに、茫然と立ち尽くしている。
僕に知られたくなかったから――純菜さんの言ったことに言葉を詰まらせたあなたは、グッと唇を噛んでいた。
「いい話なのよ」
「わかってる」
「だったらっ……」
「純菜には関係ないだろ!? これは俺が自分で決めることなんだから」
「そうよ。けど、あなたは彼のせいで迷ってる……」
僕のせい――……?
どうしてこの話に僕が関係しているの? 全然わからない――。
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