彼女の想い

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彼女の想い

 あなたに想いを告げられてから、僕は毎日考えていた。  僕はあなたのことが好き――  あなたも僕のことが好き――  でも、あなたは留学のために遠くへ行ってしまうかもしれない。  本当は、離れたくない。ずっと一緒にいたい。だけど、あなたの可能性を僕のワガママで奪うことなんてできない。できるわけがない。  わかっているのに、自分の気持ちを面と向かって言えないのは、迷いがあるから――?  考えても考えても、僕は気持ちの整理がつかなくて――気が付くと、明日は家庭教師の日。  学校からの帰り道、僕はいつものように公園の前を通り、家路へと向かっていた。 「壮亮君……」  背後から僕を呼ぶ声が聞こえる。  振り返ると、そこには純菜さんが少し俯き加減で立っていた。 「純菜さん……」 「少し話せないかな?」 「いいですけど……」  今まで会った感じとは、全く違う雰囲気の純菜さん。  いつもは自信に満ち溢れているように見えるのに、今日はずっと下を向いている。  話がしたいという純菜さんと、公園のベンチへ座った。  しばらく僕たちの間に沈黙が続く―― 「あの……この間はごめんなさい」  座ったまま深く頭を下げてくる。 「いやっ……あの……」 「本当にごめんなさい……」  突然の出来事に、僕は頭が真っ白になってしまっている。  純菜さんは、頭を下げたまま顔を上げてくれない。 「顔を上げて下さい……」 「けど……」 「もう十分なんで……」  僕の言葉で、ようやくゆっくりと顔を上げた純菜さんは、僕に向かって優しく微笑んだ。 「ありがとう……壮亮君」 「いえ……」  この間の剣幕とは違い、穏やかな空気が流れている。  僕には、何となく違和感のある空気だけど、純菜さんから感じるものに威圧感はなかった。 「私ね……悔しかったの……」 「悔しい……?」 「そう。玲弥君とは幼い時、近所に住んでたことがあって、その時から私はずっと彼が好きだった。幼いながらにドキドキしてたの」  昔を思い出すように、遠くに視線を向けながら語り始めた純菜さんに、僕は静かに耳を傾ける。 「ある日、突然、玲弥君が引っ越すことになって、私はショックで堪らなかった……。だから、ずっと探してた」 「ずっと……?」  僕の質問に、彼女が首を縦に振った。
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