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「壮亮君も、好きなんでしょ?」
「……はい」
「だったら、素直に気持ちを伝えてあげて。そうすれば、きっと前に進めるから……」
「でも……」
このままじゃいけないことくらいわかっている。ちゃんと自分の気持ちを伝えなくてはいけないことも――。
「離れたくない?」
俯いてしまった僕を、覗き込むようにして尋ねてきた純菜さんに、僕は静かに頷いた。
「大丈夫よ。今まで離れてても、お互い好きでいられたんでしょ?」
「な……んで……?」
「昨日ね、玲弥君が話してくれたの。その前にこっぴどく叱られたけど……」
「何を聞いたんですか?」
純菜さんがここへ来たのは、あなたが彼女と話をしたからだとしたら、どんなことを話したのか気になって、思わず問い掛けてしまっていた。
「引っ越してすぐ壮亮君に出会ったって。いつも元気で明るくて、落ち込んでた自分を一生懸命に笑顔にしようとしてくれたって。だから、ここへ来て良かったと思ってるんだって言ってた」
「玲弥さんが……?」
「うん。でも、ある時から突然、壮亮君が距離を取り始めたって言ってたの。それって、もしかして……玲弥君のことを意識し始めてたから……とか?」
純菜さんの質問に対して、僕はゆっくりと首を縦に振った。
やっぱり気付いてたんだ――玲弥さんは、僕があなたから距離を取り始めたことに――。
ずっと一緒に遊んでいたのに、自分の気持ちに気付いた途端、僕はあなたと遊ぶのを止めた。
一緒にいればいるほど、好きになっていく自分がいたから――。
あの出来事があって、それが確信に変わってしまったから――。
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