春に降る雪の中で……

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春に降る雪の中で……

――二年後――  あなたが留学してからは、たまにPCを通してメールのやり取りをするくらいで、電話をすることはなかった。  声が聞きたいって思うこともあったけれど、声を聞いてしまうと会いたくなってしまいそうで、メールだけにした。  明日から、新学年が始まる。  僕は一日早いけど、調べておきたいことがあったから、大学の図書館へと足を運んでいた。  もう春だというのに、今日は朝からすごく冷え込んでいる。  学校が始まっていないからなのか、図書館には人が少ない。  静まり返っている中で、探していた本を見つけて机の上にそれを乗せると、イスに座って読み始めた。  あなたのいない生活は、寂しいと感じることもあったけれど、自分の気持ちを閉じ込めてしまっていたあの頃とは状況が違うせいか、心にゆとりが持てていた。  それに、明日あなたは帰ってくる。  昨日の夜、久々にメールが来ていると思ったら、『明後日の午後に帰宅する』とだけ書かれていて、それ以外のことには特に触れられてなかった。  だから、何時の便で帰ってくるかもわからない――。  迎えに行きたくても行けないし、むしろ迎えに来るなってことなのかと思ってしまう――。  必要なことをメモ書きすると、本をもとの場所に戻して、図書館を後にした。
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