隣に住む憧れのお兄さん

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隣に住む憧れのお兄さん

 僕にはずっと憧れている人がいる。  その人は、僕よりも一つ年上で、背が高くて格好良くて、笑うとフニャリとした表情で子供のようなあどけなさも持っている。  家が隣同士になったのは、僕がまだ三歳の頃だった。  新しい家が立ち、そこへ引っ越してきたのが(うち)()(れい)()こと、玲兄で、初めて見たとき、僕はそのキレイさに三歳ながら見惚れてしまった。  少し悲しそうな目をして新しい家を見上げている姿から、目が離せなかったことを今でもはっきりと覚えている。  どうしてあの時にあれほど悲しそうな目をしていたのか――その理由は僕たちが仲良くなってだいぶ経ってから知ることになる。  初めて会った時から、もうすぐ十五年が過ぎようとしていた。  玲弥さんは大学生になり、僕は高校三年となっていた。 「おはよう」  背後から聞こえてきた声に、僕はすかさず振り返って満面の笑みを見せる。 「玲弥さん、おはようございます」  今、僕に向かって笑顔で声を掛けてきてくれたのが、お隣の玲弥さん。  小さい頃は玲兄って呼んでいたのだけれど、中学校で僕がサッカー部に入ってから呼び方を変えた。  初めはお互いに違和感があったけれど、それもいつの頃からか無くなって、今はそれが普通になっている。 「今から学校?」 「はい。玲弥さんも?」 「そう。相変わらずサッカーしてるの?」 「もちろんです。次の大会で最後だから気合入りまくりです!」 「へえ……青春って感じだね」 「玲弥さんは、大学で何かやっているんですか?」 「いや、特に……。けど、バイト始めた」 「バイトですか!? だから最近帰りが遅いんですね」 「えっ?」  咄嗟の一言だった――。  僕の部屋の窓と玲弥さんの部屋の窓は隣り合わせで、お互いにカーテンで中は見えないけど、灯りが点いているか消えているかはわかる。  最近は、僕が眠ろうと布団に入って電気を消した頃に、隣の灯りが点くことがあったから――。
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