魔法少女になりたい

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 西暦20XX年魔法少女は増え続けていた。  女性の社会進出が進み女の子の夢が叶う時代、夢見る少女の増加に伴い魔法少女もまた増加の一途をたどっていた。魔法少女は特別な存在ではなくなり誰もが魔法少女になれる時代へ、一家に一台魔法少女時代の到来である。 「魔法少女の呼吸1の型…」  あの子も魔法少女 「魔法少女は全て殲滅する! 」  この子も魔法少女 「あの魔法少女は私のお母さんになってくれるかもしれない人だったのだ! 」 「エゴだよそれは! 」 「時が見えるわ…」  みんな魔法少女。  魔法とは心のエネルギー。エネルギーとは即ち資源。彼女達の放出する魔法は石油や太陽光発電を過去のものとする次世代のエネルギーと注目されていた。 ・・・ 「ねぇねぇ聞いた? 3組の大谷ちゃん魔法少女になったんだって! 」 「ええ!? 大谷ちゃんが? 」 下校中、菜月がそんなことを言い出した。菜月は小学校の頃の友達だった。中学でクラスが離れて部活も別々なのでちょっと疎遠になったのだけれど、久しぶりの再会に話に花が咲いていた。 「しかもロボットと合体する魔法少女とロボットの二刀流なんだって! 魔法少女オオタニ・サン。イッツアショータイム! 」  奈月がオオタニ・サンの真似をして決めポーズを決めてみせる。ちなみにオオタニ・サンのサンは太陽のサンらしい。 「羨ましい! 」  中学生ともなると全学年の半分以上が魔法少女に覚醒している。  統計によると小学生で3割が魔法少女になり、中学生で4割、高校生で2割が魔法少女になるというデータがある。ちなみに最後の1割は大学生…だったらいいのだが、三十路魔法少女とか熟女魔法少女とか昼下がりの人妻魔法少女とか…ネタ枠が大半だったりる。むしろ大学生まで行ったらネタ枠に割り振られていると考えたほうがよい。 「ああ、私も速く魔法少女になりたいな。伝説の水上先生みたいになりたくないよぉ」  水上先生は10年前に実在したという伝説の魔法少女だった。保険の先生となって就任し、全校生徒の前でスピーチしているまさにその瞬間に魔法少女として覚醒したという。コスチュームは勿論ムチムチのエロエロだった。だって保険の先生だもの。エロい理由はそれだけで十分だ。人前でエロエロ姿に変身した水上先生はその後すぐに引きこもりになり、先生になることを諦めて実家に帰ってしまった。そうして彼女は伝説となり10年たった今も語り継がれている。なんという悲劇。子供は正直だからね。仕方ないね。  特に透のクラスは早熟でありクラスで魔法少女になったことがないのは透だけった。このままでは水上先生のように予期せぬところで魔法少女に覚醒し大恥をかいてしまうかもしれない。 「ううん。それ以上に魔法少女は私の夢だもん。綺麗なべべ来て活躍したいよ! 」 「透ちゃん、そんなに魔法少女になりたいの? 」 「勿論だよ」 「そう…」  透は真剣に思い悩んでいたのでその時菜月の目が怪しく輝いたのに気が付かなかった。 「あっ! あんなところに子猫が捨てられているよ! 」  菜月はそういうと懐から子猫を取り出した。 「マスコットは魔法少女へと繋がるパイプ役だよ! 飼っておいて損はないと思うな! 」 「え? でもその猫、菜月の懐から取り出したような…」 「そんなの気のせいだよ! 」  菜月は満面の笑みで言い切った。そういわれるとそれ以上返すことはできなかった。何せ一瞬の出来事だったから見間違いと言われるとそうなのかもしれない。偶然たまたま捨て猫が菜月の懐に飛び込んだのでまるで懐から飛び出たように見えたのかもしれない。 「残念だけど私の家はマンションだから飼えないや」 「え? 菜月ちゃんの家は平屋の一軒家じゃ…」 「この間引っ越したばかりなんだ! 」  最後に遊びに行ったのは1年前だし、そういわれるとそういうことがないともいえない。透は素直な子だったので無理やりそう納得した。友達を疑うのはいけないことだ。結局、子猫は透が一時的に預かることになったのだった。 ・・・ 「ふふふん♪ ふん♪ 」  透は能天気に鼻歌を歌っていた。機嫌は上々。それもそのはず公園で拾ってきた猫を飼ってもらうことが決まったからだ。まさか本当に飼ってもいいということになるとは思わなかった。なんでもチャレンジしてみるものだ。この間NHKで売れ残ったペットの処分問題をやっていたからかもしれない。保健所おくり、それは死を意味するのだ。仲良くなった子猫を自分の手で死地に送るのは情操教育に悪い。ノーモア体罰。カムヒアお手々繋いでみんなでゴール。生徒全員桃太郎。ありがとう情操教育。 「ごはんよ~」  下の階でママが呼んでいる。 「待って~すぐ行くから」  透は返事をしてセーラー服から着替えようとして、そして動きがとまった。  さっきまでミルクを飲んでいた子猫がいなくなっていたからだ。いやそれだけではない。代わりにありえないものがそこにいた。 「バブぅ~」  そこにいたのは人間の赤ちゃんだった。 「ホワイ? 」  混乱して英語で疑問を呈してしまった。特に意味はない。  赤ちゃんは指をくわえてスヤスヤチ眠っている。どこからどうみても赤ちゃんだ。この赤ちゃんは一体どこから来たのだろう? そして子猫は何処へ?  何故赤ちゃんがいる→産んだから→誰が→ママ 「なるほど、そういうサプライズが…あるわけないよ! 」  透は元気に一人でノリ突っ込みをした。ひょっとしなくても透はちょっと愉快な子供だった。 「え、ちょっと待ってよくわかんない。なんで私の部屋に赤ちゃんがいるの? おかしいよね? サンタが枕元に置いていったの? クリスマスでもないのに? いやクリスマスだっておかしいけれども。まさかママ人の赤ちゃん、盗んだ? 」  後ずさった拍子にテレビのリモコンをふむ。 「今日の特集はアフリカで13歳で未婚の母となった少女についての特集です。アイシャさんに年齢を聞くと正確にはわからないといいます。教育を受けていなので年齢の記憶すらあいまいなのです。アイシャさんの仕事は水を汲みに行くことで赤ちゃんを担いで8時間の道を歩きます。そうして得られる水は泥水ですが、どんなに汚くてもこの水を飲むしかありません」  アナウンサーがアフリカの過酷な現状をリポートしている。13歳で未婚の母となったアイシャ。世の中にはもっと小さな、小学生で子供を産む者たちもいると言う。 「まさか、私が産んだ!? 」 「そんなわけないバブ」  突っ込み不在のカオスな状況を救ったのはその赤ちゃんだった。  何やら周りを球場のエネルー波で多い包宙に浮いている。明らかに普通の赤ちゃんではない。 「赤ちゃんが喋った…ていうか、浮いてる!? 001!?」 「僕は透ちゃんに飼ってもらうことになった猫バブ」 「猫ちゃん? 」  そんな馬鹿なことが…いや、ある。この世界にはそういうこともある。なぜなら。 「実は透ちゃんに頼みがあるバブ魔法少女になって欲しいバブ」 「来たー! 」  透はガッツポーズして喜んだ。どうしてもっと早く思い当たらなかったのだろう? 世の中の不思議は全て魔法少女を代入すれば解決する。西から昇ったお日様が東に沈むのも、人間が壁をすり抜ける確率が0ではないのも、1を3で割ると0.333…で割り切れないのに1mの紐を3つにたたむと存在できてしまうのも全部魔法少女のお陰なのだ。  ついに私にも魔法少女になる時が!  喜びに打ち震える透。  でもそれはそれとして、赤ちゃんだから語尾にバブか。分かりやすいけどすべってるからやめさせたほうがいいよね。後から注意しよう、と透は思った。 「理解が早くて助かるバブ。さっそく魔法少女になってもらうバブ」 「よっしゃー! どーんと来い! 」  透はノリノリだ。13年間考えに考え抜いた変身の決めポーズやら決め台詞がついに火を吐くときが来たのだ。 「その意気やよしバブ! まずは拳を天に突き上げるバブ」 「こう!? 」  言われた通りに右手を天に突き出す。我が人生に一片の悔いなし! 「そして「魔法少女ファイト! レディ、ゴォ!!!」と叫ぶバブ」 「よし来た! 魔法少女ファイト! レディ…て、ちょっと待って! 」  でも途中で何かおかしいと気づく。 「それ魔法少女じゃなくない? なんか4年に一度世界中の国の代表が集まって、国の威信をかけたロボット格闘技大会とか始まりそうだよ!?」 「ロボットは出てこないバブ。でも確かに格闘系なのは否定でき無いバブ」  魔法少女にもいろんなタイプがある。透がなれるのは格闘系魔法少女らしい。 「え~痛いの嫌だな」  でも憧れの魔法少女になれるのも事実だった。これくらいは目をつむるべきかもしれない。透は瞬時に考え直した。 「分かったよ。やらずに悩むよりやって悩む。変身するよ!」 「その調子バブ! 」  透は意を決して、もう一度天に拳を点に突き出した。 「魔法少女ファイト! レディィィィィ! ゴォオオオオオ!!!」  やるとなったらノリノリだ。  何やら上空から黒いサランラップのようなものが現れサランラップが透の体に張り付いていく。 「いたいたいたいたいたい! 何これ!? 」  強引にラッピングされる透。  余りの痛さに地面にへたり込む。思ってたのと全然違ったが一応変身完了したみたいだった。どこぞの黄金戦士が着ていそうなキラキラのゴールドアーマーに身を包んでいる。 「これで君は、聖魔法闘士ハンマートールバブ! はい決めポーズ! 」 「くそう! 負けるか! 」  魔法少女になることは透の夢だったのだ。こんなことでへこたれてはいられない。透は根性で立ち上がる。 「聖魔法闘士ハンマートール! 君は小宇宙を感じたことがあるか!? 」  ビシッと恰好を決める。だが…何か奇怪しい。いや、むしろ全部奇怪しかった。 「て魔法少女じゃなーい! 何、聖魔法闘士って!? なんで鎧? しかもハンマーって…なんかものすごくカマセ犬っぽい名前だよ?」 「実を言うと透ちゃんは第二の聖魔法闘士バブ。第一の聖魔法闘士の戦いに巻き込まれてしまった感じバブ」 「巻き込まれたって、君が巻き込んだんじゃないのかな? 」  じと目で赤ちゃんを見つめる透。  魔法少女と言ったら第2第3の魔法少女が付き物だ。それらは時に仲間だったりライバルだったりする。彼らは魔法少女になった少女のために用意される架空の存在だが稀に現実の人間が選ばれることもあった。その場合条件は未だに自分の魔法少女の物語が始まっていない少女ということになる。一度最終回を迎えた魔法少女はストーリー途中の魔法少女より強いから簡単に敵を倒してしまう。そうなると現在進行形の魔法少女は物語を終えた魔法少女に自分の物語を乗っ取られてしまう。そういう意味では未だに魔法少女になったことがない透は適任ではあった。 「じゃあこれは私の魔法少女の物語じゃないんだね…」  透は安堵した。  どうせなるならもっと可愛い魔法少女がいい。でもこれが誰かの魔法少女の物語なら透が主役ではないし妥協しないといけないのかもしれない。 「魔法少女の力を得たのは事実バブ。頑張って第一の魔法少女を見つけて合流して一緒に戦ってほしいバブ」  どうやら透の役割は主人公の魔法少女の手伝いらしい。 「私も部活とかあるし、どうしようかなぁ」 「所詮サブキャラだから毎回出番があるわけじゃ無いバブ。本当に自分の物語が始まった時の予行練習だと思えばいいバブ」 「なるほどぉ」  それならちょっとくらいやってみてもいいかもしれないと透は思った。本当の自分の魔法少女の物語が始まった時の予行練習になるかもしれない。  でもやるならやるで魔法のバトンくらいは欲しいところだ。透の物語になった時にはきっと可愛いバトンを格好良く使いこなす予定だし。今のうち恰好の付け方とか研究したい。 「魔法のバトンみたいなのはないの? 魔法少女ってそういうのを持っているものでしょう? 」  名前からして、透が持つ魔法のステッキはハンマータイプな気がするけど。  そういうキラキラしたアイテムも魔法少女の醍醐味のはずだった。 「そんなものなないバブ。武器は鍛え抜かれた己の身一つバブ」 「鍛えぬいてないよ! 無理だよ! 名前がハンマートールなんだから。ハンマーが武器なんじゃないの? 可愛くないから嫌だけど! 」 「そのハンマーじゃなくて地上最強の生物、鬼という意味バブ」 「なにその意味、よくわかんないんですけど…」  この魔法少女の物語の本当の主と透はあまり物語の趣味が合わないらしい。透は天を仰いだ。 ・・・  地方ということもあり、街の夜景はあまり綺麗とはいい難かった。  だがその代わり星はそれなりに見える。  田舎と比べるとそれも細かくとは言えなくて、どっちも中途半端だったけれど。  それでも少女はこの町が好きだった。  1人の少女が煙突の上から町を見下ろしている。全身ゴールドの百年たっても戦えることを期待されてそうな、本気で戦ったら千年戦争が起きそうな、煌びやかないで立ちの魔法少女だった。 「ふっ、ふ~ん。透ちゃん。どうやら上手くいったみたいね! 」  彼女の視線の先にあるのは透の家だった。  常人ではとても見ることができない距離だったが、少女にはそれを見通すことができるようだ。少女の口元がニヤリと笑う。  少女の目には透が猫を飼ってもらうことが決まってママと抱き合っているのが見えていた。 「その子は私からのプレゼント。一緒に魔法少女になって遊びましょ? くっくっく…ははは、アハハ…アーッㇵッハッハ!!!」  そうして彼女は盛大に笑った。馬鹿笑いだ。  馬鹿と煙は高いところを好む。皆まで言うまい。 「ちょ? あれ? 煙が…前が見えな…」  煙突に立っているのだから、当然煙突から煙が上ることもある。  だが急に煙が上がったせいで少女は視覚を失い煙突から足を踏み外した。 「ぎゃー」  少女は煙突の上から真っ逆さまにおっこちた。でも大丈夫。魔法少女だからそのくらいでは死なない。なんかこう、地面に人型の穴が開くだけで済んだ。 「いたい…」 「赤四辻さん、ちょっとしっかりしなさい。貴方の魔法少女の危険度は、先日Aランクに上がったのよ? これからはこういうことで死ぬこともありえるんですよ? 」 「赤四辻さんじゃないです。今の私は聖魔法闘士ゴールドナッチです。沢城先生」 「ならあなたも沢城先生ではなくラブリーエリカと呼びなさい」  人型の穴からはい出てきたナッチを呆れたように見るのは彼女の担任の沢城先生…の変身した姿。ラブリーエリカだった。年齢はアラサーなのでいかがわしい店のいかがわしいコスプレのに見えるが彼女もれっきとした魔法少女だった。  物事には終わりが存在する。物語を終えた魔法少女は大抵は力を失うが中には力を持ったまま物語を終えるものも存在していた。そしてそんな魔法少女が他人の物語に介入して事件を解決してしまうことが社会問題となっていた。  そんな魔法少女達を縛るのが魔法少女法であり魔法少女委員会だった。エリカも委員会から派遣された監視役だった。 「ところで、あんな高いところに登って一体何をしていたの?」 「ギクッ」 「何ですかそのあからさまに怪しいリアクションは。というかあなた本当にAランクの自覚があるのかした? そのリアクションといい、この人型の穴といい。まだGランクの頃のノリが抜けきれていないようね。何度も言うけどもうギャグ漫画の住人ではないのよ? 」 「誰がギャグ漫画の住人ですか! 」  危険度Aと言えば生命に危険が及ぶことも起きうるレベルの事が起きる魔法少女だ。だがこんなギャグ漫画みたいなことが起きるのなら死人が出るとは思えない。家が爆発しようが、地球が爆発しようが、次の日には元に戻っているのがギャグ漫画の世界だ。そういう意味ではギャグ漫画補正は最強とも言えた。危険度はあくまで危険度で魔法少女の優劣を決めるものではなナっチ 「そもそもそんなこと私に言われても。好きでAランクになった訳ではないので…じゃなくて、好きでAランクになった訳ではありませんわ。おーほっほっほっ! 」 「いきなりキャラ思い出さなくてもいいのよゴージャスレッドバトラー。ていうかちょっとキャラ間違ってない? 」 「間違ってるのは先生です。ゴージャスレッドバトラーではなくゴールドナッチです。ゴしかあってないです」  ナっチがブーたれる。でも 「兎に角、貴方は魔法少女の危険度が高いんだから無暗に他人を巻き込んでは駄目よ?」 「…あ、はい」  ナッチはあからさまに目をそらした。 「だからなんなのその不安になるリアクションは?」  ほっぺをひっぱるエリカ 「ふぇんふぇい、ひたいでふ、ひたいでふはら(先生、痛いです、痛いですから)」 「本当に分かっているの? 」  コクコクと頷くナッチだったが、透を巻き込む気満々なので勿論分かっていなかった。 「同じクラスになれないなら、部活に入れないなら…同じ魔法少女になるまで! 」 「何か言った? 」 「いえ、何も」  視線をそらして、ふけない口笛とか吹いている。やはり怪しい。  ゴールドナッチはつい先日まではGランクの魔法少女だった。体が消し炭になっても、首チョンパされても死なない。自分の首で高い高ーいできちゃうような世界観の魔法少女だった。魔法少女力は元々高かったが死ぬ危険はないのでGランク。それがAランクに格上げされたのは彼女の本当の敵が本物の神であることが発覚したからだ。  敵が神なら危険度Aではむしろ低すぎるくらいに思えるが、魔法少女で敵が神と言うのも割とありふれているのでこのくらいの危険度指定だった。ハーデスを倒したぞ、サタンを倒したぞ、ルシファーを倒したぞ、一体何人ルシファーいるんじでしょうね? という感じだ。それでも一応神は神。それなりに危険であることには変わりなかった。 「赤四辻さんこれから冥界編でしょう? こんなところで遊んでていいの? 仲間の13使途はどうしたの? 」  ナッチは確か13使途と戦いながらこぶしで語り合った後は和解して仲間を増やすみたいなストーリー展開だったはずだ。ということは仲間が13にいることになるが単独行動しているように見える。 「13使途は全員死にました。残っているのは私だけです。つまり私一人で冥界の敵を倒さなくてはならないってことですね! これは燃えるシチュエーション! 」 「ええ…」  エリカはドン引きした。これから危険度Aの物語が始まるのに一人で冥界に行く? これ失敗したら戻ってこれない奴や。非常に危険だ。教師として監視役として見過ごすことはできない。 「最初のパートナーだった子はどうしたの? ゴールドサジタリウスだっけ? 」 「ああ、サッチャンね。サッチャンは私に奥義を託して死にました。でも大丈夫。冥界編で再会する予定なんで。かつての仲間が敵となって立ちはだかる熱いシチュエーション! でも大丈夫! 敵となって蘇ったことでみんな生き返ってハッピーエンドの予定なんで! 」  ナッチの話だと13使途は全員冥界で洗脳されて操られているので、しばき倒して洗脳を解いて、一緒に戻ってくる予定だと言う。 「赤四辻さんだけ冥界に行く予定なのよね? これって失敗すると冥界に捕らわれてこちらの世界に戻れないパターンじゃないかしら。先生も一緒に行ってあげようか? 」 「それはノーセンキュー! どこの世界に先生に助っ人を頼む魔法少女がいますか! 助けてもらうならかつての敵とか、友達とかが覚醒するパティーンでしょうが! 」 「かつての敵って仲間になってくれそうな子いるの? 」 「それは…いないけれども」 「じゃあ…友達が覚醒するのね」  エリカの目がすっと細くなる。 「でもおかしいわね赤四辻さんはクラスに友達なんていないはず…」 「い、いますよ。友達くらい! 私皆の人気者でしょ? 広く浅い付き合いの友達が沢山います! 」 「今はそうね。小学生の頃は隣のクラスの明日嶺透さんとずっとつるんでたみたいだけど」 「え…」  ギクリと挙動不審になるナッチ。 「明日嶺さんを魔法少女にして一緒に連れていく気なのかしら? 」 「そ、そんなことあるわけ…あーちょっと待って! 先生! 」  エリカは話を最後まで聞かず駆け出していた。
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