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 駅裏から地下道を通って駅前へと歩く。しかし、やはりどう考えても私が悪いのだ。あれはただの嫉妬。わかっている。  そうだ、彼女に謝らなければ。私はすぐに公園へ戻った。 地下道の階段を勢いよく駆け上がった私の前を一台の車が横切る。 「危ないなあ」  減速もしない車を睨みつけるうち、私は気付いてしまった。 走り去るドアからはみ出たスカートの裾は、先程置き去りにした雅美の履いていたそれと同じ色だった。  嫌な予感がする。私は先ほどの車の進行方向とは反対にある公園に向かって走った。  すると、公園に先ほどまでいた筈の雅美の姿が消え、口が開いて中身が少し飛び出た彼女のカバンがベンチの下に転がっている。  雅美のスカートと同じ色の布がドアの隙間からはみ出していた車。消えた雅美。そして、ベンチの下に転がった彼女のカバン。おそらく雅美は何らかの事情でさらわれたのだ。  大変だ! 一刻も早く誰かに知らせなければ!  しかし、私はある一点を見つめ息を呑んだ。そう、彼女の小説の束が入ったカバン。  私にとってそれは宝箱だった。  私は咄嗟に宝箱から宝を取り出し、自分のカバンに押し込んだ。そして一目散に駆け出した。 私は何も気付かなかった。 黒い車など見なかった。 水色の布など見なかった。 彼女が連れ去られるところなど見なかった。  ただただ行きよりも格段に重くなったカバンを抱え走った。  カバンは公園から遠ざかるほど重さが増していった。  しかし、自宅に近づいたところで考える。  もしも雅美が誰かに私と今日会っていることを話していたら? 彼女の身に何かあった時、私が疑われるのでは? どうしよう? どうすれば良い?  私は大急ぎで帰宅すると、雅美のノートを勉強机に並んでいる自分のノートに紛れ込ませていった。学校のノートとノートの間、ノートを開いたその間、学生カバンの中。  膨大な雅美のノートを自分のノートに次々飲み込ませていった。これで警察が来ても、雅美から奪った物がここにあることは気付かれないだろう。  あとは練習通りにやるだけだ。  そして祈るだけだ。  雅美に何か良くないことが、起こりますようにと。
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