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「もう二十年も経っている。今更新選組だというだけで、ましてや娘かもしれないというだけで、罪に問うような真似はしない」
「そうかい。じゃあ盗みの方でいいよ。さっさと牢にぶちこんでくれ」
警官は、さらに何かを書きつけた。そして、扉の向こうにいる警官に声をかけた。
「調べは終わりだ。こいつを牢屋棟へ」
女の身柄は扉の外にいた警官に引き渡された。取り調べをしていた警官と同い年くらいの中年の男だ。見張りを若造に任せないあたり、人手不足か何かなのか。はたまた女が本当に逃げ出す可能性を見越したのか。どちらにせよ、女にとってはどうでもよいこと。
女の手に繋がれた縄をぐいと引っ張りながら、中年の警官はずんずんと警察署の建物を出ていく。女は抵抗することなくついていった。
外に出ると、少しだけ冷たい風が吹いた。夏が終わる。寒くなれば夜鷹を続けるのも難儀するだろうから、今回捕まったのは女にしてみればむしろ都合のいいことかもしれなかった。牢の中なら、少なくとも雨風はしのげる。
牢屋は隣の建物のようだ。
だが、警官は中には入らず建物の前を通り過ぎた。そして、小さな路地に入った。
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