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「大丈夫か」
おかしなことを言っている。大丈夫か、じゃないだろうと突っ込むけど、続く言葉が出ない。空耳の上に空耳を重ねたら骨董級の愚だ。混乱が極みに達し、俺はとりあえず今いうべきことを探した。
「理樹。あけましておめでとう」
「……おめでとう」
理樹が腑に落ちない表情のまま上目遣いで俺を見る。
「今年もよろしく」
「よろしく」
おうむ返しに答える火照った顔を見おろした。
ああ、俺、理樹の彼氏になれるのかもしれない。
「ずっと、よろしく」
「あ、え? ずっと?」
理樹がまんまるな目で顔をあげた。だからお前、くそかわいいんだって。
対処に困った俺は理樹の腕を引き寄せた。
自分でも驚くほど自然に顔を近づける。理樹が目を閉じた。
はじめての柔らさに触れたときには、おしゃべりな俺はもういなくなっていた。
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