春を迎える ーside 海ー

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 夜の深まる道に目指す家の明かりを見つけ、俺は知らずほっと白い息を吐いた。  待ち合わせの二十分も前に着いてしまった。一本後の電車ならちょうどよかったのだが、時間が迫るごとにどうしようもなく落ち着かなくなった。  大晦日なのに出かけるなんて、高校生が夜中にと不満そうな母親を、まあまあ大晦日なんだしとなだめてくれた父親に目で礼を言い、家を出た。そういえば高一だった去年も同じやりとりがあったと、駅への道を歩きながら思い出した。  理樹(りき)の家の近所に有名な神社があり、去年はクラスメート何人かで行こうと盛り上がった。が、蓋を開けてみれば集まったのは俺と理樹だけだった。そんな前例があったから、今年(かい)はどうすると聞かれ、行く、まあふたりでいいんじゃない、としれっと答えた。そうだねと、なんでもないように言う理樹を見て、こいつ俺のこと好きなのかなと思った。なぜそう思ったのか理由はわからない。その瞬間が何度も耳について、俺の冬休みは今日まで何も手につかない有様だった。  表札を見て理樹の家で間違いないことを確かめ、門前で空を見上げた。濃紺にくっきりと晴れていて、いつもは見えない星まで輝いている。そのぶん冷気がつま先からブーツの内側まで染み込んでくる。やっぱりダウンにしとけばよかったなとつい独り言が出た。マフラーは一番暖かいのにしたし、イヤーマフまでつけたけど、ウールコートじゃ心許ない。わかっていたのにかっこつけてしまったのだ。二十分も待てるだろうか。そのあとも長い。駅前のコンビニのでちょっとでも時間を潰せばよかった。
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