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その日、わたしはとても複雑だった。
いろいろな疑問が浮かんでしまったからだ。
あの告白は、本当にわたしがすきだからした行為なのか。
罰ゲームではなかったにしても、単純にグループ内で彼女がいないから、焦っていたのではないだろうか。
あるいは、陰キャのわたしが末広の目にはとてもかわいそうに映り、同情で付き合ってなどと言ってきたのではないだろうか。
……など、ネガティブな考えは尽きなかった。
だが、それは杞憂だったのだとすぐにわかる。
翌日、末広は、わたしを彼女だと自分のグループのみんなに照れながら紹介してくれた。
そのときに見えた表情は、本物だったと思う。
それに、その仲間たちは、わたしに「こいつのことよろしくね」と言ってきた。
もし、わたしを陥れて楽しむのが目的なんだとしたら、こんなに手の込んだことまでしてやるほどの価値が、わたしにあるんだろうか。
なにより、わたしに笑いかけてくれる、末広やみんなに悪い気持ちが先行して、これ以上考えるのはやめにした。
たとえ、騙されていたとしても、一生に一度とないようなこのできごとを、自分から手放すなんてしたくない。
末広が出した勇気を、無駄にしたくなかったんだ。
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