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それから、わたしの生活は激変した。
中でも、末広の仲良しさんと一緒にいる時間が増え、それが楽しいと感じるようになったのが大きい。
ずっとひとりでもいいとさえ思っていたわたしに、光を差し込んでくれたのは、紛れもなく彼のおかげだ。
だが、ひとりでいる時間も大事にしたいと思っている。
それを理解してくれる彼のやさしさには感謝しかない。「ずっと大事にする」と言ってくれたのは、嘘ではなかった。
同じ時間を共有するようになって、数年が経過、高校3年生になり、わたしは、18歳の誕生日を迎えた。
「桜子、誕生日おめでとう。おれといつも一緒にいてくれてありがとう」
4月2日が誕生日のわたしは、毎度春休みのため、末広は毎年必ずデートの予定を立ててくれ、祝ってくれるのだが、今年はさらにわたしに手のひらサイズの小さな箱までプレゼントしてくれた。
「ありがとう。開けてもいい?」
「もちろん」
なんだろうとドキドキしながら包みを開ける。
すると、中に入っていたのは。
「えっ……」
それは、きらりと光る石が真ん中についた、指輪だった。
こんなプレゼントをくれるなんて予想外で、わたしははっとして顔を上げる。その反応を見て、末広はわたしを初めてみんなに紹介してくれたときのような照れた表情をしていた。
「気が早いかなーとは思ったんだよ? でも、おれの気持ちは本気だからさ。安物だし、本当のときはもっとちゃんとしたものを渡させてほしい……けど、その思いが少しでもそれが伝わればいいなって」
「っ、ありがとう。うれしい……だいすき」
「おれもすき。ずっとすきだよ」
つけさせて、と言うので、わたしは右手を前に差し出す。
薬指につけられた指輪は、ぴったりだった。
こんなに、こんなにしあわせがわたしには溢れていたのに、どうして、どこで間違えてしまったんだろう。
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