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「どしたの、桜子。そんなにフィルム割れたの悲しいの?」
「うん。最悪だよ」
「気になるなら、あとでおれが貼り替えてあげるから、機嫌直して。な?」
「……柊くん」
「ん?」
「すき」
「うん」
「機嫌、直す」
わたしがそう言うと、末広は「ん、いい子」と笑ってわたしの頭を撫でる。
「ねぇ、柊くん」
「どうした?」
「わたしのこと、離さないでね」
「当たり前だろ。絶対離してやらねーよ」
そう言って、末広はわたしの手を強く握った。
パークでは、閉園時間の30分前になると、名スポットとなっている大きな噴水の前でイルミネーションを使ったショーが行われる。季節によって変わるので、飽きられることなく、いつ来てもひとが多く集まっている。
わたしと末広も来たはいいが、到着が遅くなってしまったため、既に待機しているひとが多く、あまりいい場所では見られなさそうだった。
「あー、出遅れたな。微妙な感じにしか見えない」
「ほんとだ。これなら先に帰るのもアリかな?」
「混雑回避ってことか。桜子はそれでいいの? ここのイルミ楽しみだったんじゃ」
「ううん、いいの。今日は一日柊くんに楽しませてもらったから。気分がいいまま帰りたいしね」
それもそうか、と末広は納得してくれ、わたしたちはパークをあとにした。
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