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末広の行きたかった場所は、大学から近いとは言っても、駅の出口の反対側、まあまあな規模のショッピングモールだった。
「ここに、目当てのものがあるんだけど」
そう言ってやってきたのは、彼の言う”楽しいところ“とは、モール内に併設された映画館だった。
「久しぶりに、映画でもどう?」
「うん。いいよ。なに見る?」
「アクション映画のシリーズ最新作とかは?」
「オッケー。それにしよ」
「たまにはお高いシートで見ない? もちろん代金はおれが払うから」
「それはわたしが出すけど……突然どうしたの?」
「だって、付き合ってからは毎年当日に桜子の誕生日祝ってたのに、今年は入学後の諸々で時間が取れないって、通話しかできてなかったから」
あぁ、なるほど。
自分の誕生日のことなんて、まったく頭になかった。
「……じゃあ、お言葉に甘えて、お世話になります」
「任せて。映画が終わった頃の時間にレストランの予約もしてるから、そっちも行こうね」
さすが、用意周到だ。
毎年わたしの誕生日を祝ってくれるからこその気遣いがうれしい。
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