ただ声一つ

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セミが鳴く夏のよく晴れた日。 それは私が生まれた十年前のことだった。 「先生。この子は助かるんですよね! 大丈夫なんですよね!」 病院の入院室内では、お母さんの声が響きわたっていた。 でも医者は言った。 「残念ですがこの子はもう一生声は出せないでしょう。 、、、、」 「そんな、、、、、嘘でしょ 先生嘘だと言って泣、、、」 お母さんは泣きながら崩れ落ちた。 なぜなら、生まれた時普通の子は大きな声で 泣くが、私は一切泣かなかったらしい。 そして5年後 私が6歳の時だ。 私は2ヶ月に一度病院に行って診察してもらっていた。でもその時も声は少しも出なかった。 それから3年後 9歳になった私は、ふと思った。 「他の障害や病気の人は負けないで頑張っているのに私は何一つしてない、、、、泣」 「もう死んでもいいかも、、、、。私なんてこの世から居なくなればいい、、、、」 私はそう思いながらあの十年前と同じ青く光った空を見ていた。 自然に溢れでてくる透明な涙。まるでその涙は 水でもない雫のような涙だった。 でも私が泣いているのには理由があった。 それは小さい頃からいくら治療しても治せないし、今でもずっと声を出せないことだ。 でもそのくらい耳が聞こえない。という障害に 重い人もいる。とは言われたけど、私の場合 重い中でも、もっと重い方だった。 そんな時期もあった中、 日々毎日を乗り越えて、、、、 2年後
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