ポリティカル・リフォーム

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 SNSを確認すると、案の定、官房長官がヤバいだの、ヤラセだのと書き込みが相次いでいた。その日、〝官房長官〟はトレンド世界一位になっていた。  当の本人は、スタジオの異様な空気すら読めず、猫語でまくし立てていた。 『鈴井様、あの悪心の固まりのようなタヌキに引導を渡してやって下さい』 「わたしがですか? でもどうやって……」  ふと悪心と聞いてひらめいた。そう言うキーワードを聞いた覚えがある。わたしは持ち込んだ発明品の中から、卵の形のカプセルを取り出してカバーを開けた。  ディスプレイの表示を〝悪心・レベルMAX〟に切り替え、スタジオのカメラ前の下にそっと置いてくる。これで、特に悪い心を持つ人間になんらかの作用があるはず。  しばらくして、突然大門が立ち上がり、フラフラとスタジオの中央に出た。 「官房長官? どうされましたか」 「……私は、愚かな人間です。いや、塵芥にも劣る存在だ。私は総理の考えに反発するあまり、彼を軟禁してしまいました。更に、ご家族にも不都合が起こると脅迫し、意のままに操ろうと画策していたのです」  スタジオがしんと静まり返る。  〝イチゴイチエッグ〟が発する音波の影響を受けた彼は、次々に罪の告白を始めた。これまでにも脅迫まがいのことを繰り返していたらしく、流石にシャレにならないものとなった。なんらかの圧力がかかったのか、放送自体は中止となったが、時既に遅しだ。 「わっ、私は、偽りの姿で国民の皆様の前にっ」  大門は頭のアレを自らを脱ぎ捨てて半狂乱になりながら、スタジオ外に強制連行されていった。
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