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番組での大門官房長官の奇行は、当然ながら大きな話題となった。ネットには番組の切り抜き映像が拡散され、一部でちょっとしたオカルト騒ぎになった。官房長官は何かの霊に取り憑かれたなどと、まことしやかに噂されているのだ。ある意味では当たらずとも遠からずだが。
その事を知った三城さんは、わたしと安藤さんを叱りつけた。インスタントマンは姿を消していても空間が揺らいで見える。わたしたちが動いた時の揺らぎが、映像に少しだけ映り込んでいたのだ。
「全く、やり過ぎだ。あの番組の映像は何年も語り継がれることになるだろう。当面の間、ヒーローは禁止する。いいな、二人とも」
彼女はそう言って、開発室に戻ろうとした。
「……博士。わたしたちは総理と博士の気持ちを救いたかっただけなんです」
落ち込む安藤さんをなだめながら博士に訴えると、彼女は背中を向けたまま立ち止まった。
「……ああ。嬉しかった」
ポツリと彼女がつぶやいたのを聞いて、わたしはほっと胸を撫で下ろした。
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