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一月ほど経ち、わたしと安藤ズはテレビのニュースを見ていた。第二次氷室内閣のお披露目が始まるのだ。
氷室総理の〝PR構想〟は結果的に話題となり、内閣の主要ポストは大きく入れ替わった。若い有能な政治家を積極的に登用し、今までに例を見ない内閣として、スタートを切る。彼の手腕が問われるのはこれからだろう。
インタビューを受ける氷室総理の背後に、スーツ姿のガタイの良い男が立っている。意識しているのか、ちらちらとカメラ目線になる。しかも、さり気なくピースサインを送る始末。いつぞやに会った熊さんだ。
「あの男に任せておけば、大抵の外敵は排除出来るでしょう」
安藤ロイドが誇らしげに語っているが、目立ちすぎじゃないか、あの人。
開発室に降りると、小さな機械を手にした博士が、猫にアンテナを向けていた。
「博士、また新しい発明ですか」
「うむ。猫と会話を成立させることが出来る、その名も〝トランシーニャー〟にゃ」
「今、間違えて〝にゃ〟って言いましたよね」
「猫はヒゲから電波に近い波動を出して、会話を成立させているという説がある。こいつはそれを傍受して、同質の波動に変換する物だ」
「ねえ、今〝にゃ〟って」
「うるさいにゃ」
はたから見ると、わたしたちの活動はバカバカしく見えるのだろう。でも、わたしの居場所はここ以外考えられない。人は発想次第で何でも出来る。そんな風に考えさせてくれる彼女の側で、もう少し色んな体験をしたい。今はそんな風に思っている。
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