三城博士

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「アムールティでございます」  応接用のテーブルに通されたわたしに、メイドさんがお茶を持ってきた。 「ありがとうございます」  お礼を言うと、彼女はニコリともせずに去っていく。表情と口調があまりに無機質だ。もしかして、アンドロイドだろうか。 「気を悪くしないでくれ。安藤さんは人見知りでね」 「ああ、アンドロ……じゃなくて、安藤さんとおっしゃるんですね」  出されたお茶を一口飲む。甘いフルーツ風味がわたしの好みだ。 「それで、君の名前を聞いてもいいかな」 「鈴井茜です」  わたしが名乗ると、彼女はじっとこちらを見つめてきた。その整った顔立ちのせいで、なんだか気恥ずかしくなってしまう。 「……鈴井君、君に頼みがある。このラボで働いてくれないか」 「……え?」  唐突な話に紅茶を吹き出しそうになった。 「死を選ぶぐらいなら、思い切って生き方を変えてみるのも悪くないだろう」 「いやいや、だから、わたしは自殺志望はなくて……」 「今、人材を探していてね。ひと目見て、君が適任だとわたしは判断した」  この人、相変わらず、人の話を聞いていない。いくら嫌なことがあっても、これまで沢山の苦労を乗り越えて、やっとスキルも身についてきた仕事だ。そう簡単に手放す訳にはいかない。 「給料なら、心配しなくていい。今の三倍出そう」 「やります」  わたしは即答した。
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