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「博士、どういう仕組みなんです? 挟めないのはまだわかりますけど、突けないのは流石に意味がわかりません」
「君が仕様を知る必要はない。余計な先入観は検証の邪魔になるからな」
なんだか誤魔化された気がする。わたしはふとひらめいて、ハサミを豆腐の上に乗せてみた。
「嘘でしょ」
ハサミが、わずかな隙間を開けて、豆腐の上に浮いている。こんなことが可能なのだろうか。わたしはそっと三城さんの顔を見る。この人、とんでもない天才だったりして。
検証その二。安全性の限界点について。
豆腐を美味しく頂きながら、ハサミを見つめる。ハサミなのに切れないことを検証するとは矛盾している気がするが、これも仕事だ。
ハサミの刃の部分に物質と反発する性質があることはわかった。では、無理やり外力で押し切ろうとしたら、どこまで耐えられるのか。
万力にハサミをセットして、その刃の間にロープを挟む。ロープは反発するが、垂らすようにしておけば動かないだろう。
「フフフ、博士、覚悟はよろしいですね」
準備を終えて、三城さんを見る。
「君は面白いな」
三城さんは涼し気な顔で腕を組む。さあ、いつまで余裕な態度でいられるかしら。
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