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「おばあさん、誰かと話しているの?」
老婆の独り言は終わりません。背筋に冷たい物を感じました。後ろに誰か座っていました。老婆はこの男と話していたのです。意味はさっぱり分かりません、この地域独特の訛はありますがこんなにひどくはありません。私は二人の間から逃げようとすると襟首を掴まれました。凄い力があります、私は尻もちを付いて元の位置に座りました。
「どこに行くだ、お前から話があると来たんじゃろ」
老婆は私を睨み付けました。
「はい、この方はどちら様ですか?」
私が問うと二人は大笑いしました。そして訳の分からない言葉で話し始めました。
「どちら様とは失礼じゃのう、お前等が作るカッパの大将だろうが」
私は後ろをチラと見ました。緑色の足が見えました。素足でした。人間の足とは思えない色をしていました。襟が自由になりました。後ろにいた誰かは消えていなくなりました。
「おばあさんあの人は誰なんですか?」
「そんなことはいい、ここは立ち退かない、さあ帰れ。そうだ籤を引いて行け、一回五円だ」
私は50円を出して10回籤を引きました。9回がスカで最後にパチンコが当たりました。
翌日村の長を訪ねました。駄菓子屋の老婆のことを聞き出そうと思ったからです。
「昨日、駄菓子屋に上がり込んで立ち退きを迫ったそうじゃのう」
既に長の耳に入っていました。
「役所から訊いたんですか?」
「役所はわしに黙って進めようとしとるそうじゃのう」
「すいません、私が駄菓子屋の立ち退きを頼まれたものですから」
「何故、断らなかった?何故わしに相談に来なかった?」
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