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仮面さんの出入りが禁じられ、仮面さんと会えなくなったりんは、また食が細くなり、元気がなくなった。やむない用事で里帰りしていた乳母は、りんのそんな様子を見て驚いた。 「お嬢さん、何があったんどす? なんで仮面さんは出入り禁止にならはったんどす?」 「お乳母はん……」 りんはことばもなく、泣くばかりだ。乳母が里帰りしている間に何があったのかを、店の者に聞いても、みな口を閉ざして一言も話さない。埒があかないので、乳母は、善兵衛に直接尋ねた。 「旦那さん、里帰りさせてもろてる間に何がおしたんどす。せっかく元気にならはったお嬢さんが、元気なくさはって、また弱っていかはるのどすえ……」 善兵衛は、乳母のことばを聞いて、また弱っていく娘のことを案じた。仮面さんのおかげで、娘は元気になったけれど……。善兵衛は、思い切ったように乳母に言った。 「お乳母はん、仮面さんの目が青かったんや……」 「目が青い!」 善兵衛のことばを聞いた乳母は、蒼白になって、ぶるぶる震えだした。りんが生まれた時から、りんを育ててくれた、しっかり者で気丈な乳母なのに。
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